どみどりくん 無碍(むげ)自在編 後編

昨日の前編に引き続き、後編です。

それではどうぞお楽しみください。






泣きつくカズオくんの話を聞いたケンジ兄ちゃんは、とうとう堪忍袋の緒が切れました。


「ミドリ野郎!もう許さねえ!目にもの見せてやる!」


ケンジ兄ちゃんはカズオくんを従え、顔を真っ赤にしながらどみどりくんの元へと向かいます。


通学路の途中に、同じ小学校のお友達数人と立ち話をするどみどりくんを発見。


ケンジ兄ちゃんは、ずんずんとその輪の中に近づいてゆくと、どみどりくんのお友達を押しのけ、どみどりくんがケンジ兄ちゃんの方を振り向くなり、ケンジ兄ちゃんはどみどりくんをスペシャル怖い顔で睨みつけました。


どみどりくんのお友達たちは、みんな足がすくんでしまい、中にはおしっこをちびらせる子も。


特に怯む様子もなく、じいっとケンジ兄ちゃんをまっすぐに見つめるどみどりくん。


うっかり気圧されそうになったケンジ兄ちゃんは、負けじとどみどりくんの顔にツバを吐きます。


してやったりの、満足そうな顔を浮かべるケンジ兄ちゃんと、電柱の陰に隠れているカズオくん。


どみどりくんは、ツバをぬぐいもせずに言いました。


「それで、次は?」


興味深そうに、ケンジ兄ちゃんの様子をうかがうどみどりくん。


今度こそ恐怖のあまり怯んでしまうか、あるいは怒って殴りかかって来ることを想定していたケンジ兄ちゃんは、なんの言葉も出てきませんでしたし、手を出すこともできませんでした。


事実、たくさんのケンカをくぐりぬけ、負けたことなど一度もなかった、自他ともに認める一番のワルガキを相手に、こんな反応をした人物は初めてでした。


「あなたはぼくに言いたいことがあるんでしょう?」


頭の中がまっしろになり、一歩、後ずさるケンジ兄ちゃんに、こちら側の優勢と見たどみどりくんのお友達たちが、ここぞとばかりに詰め寄ります。


「やい!おまえ自分が何をしたかわかってるのか!どみどりくんに謝れ!」
「そうだそうだ!謝れ!」


お友達たちはいっせいにケンジ兄ちゃんに詰め寄ります。


電柱の陰で見ていたカズオくんは、一目散に逃げてしまいました。


「みんなやめてよ、この人はぼくに何もしてないし、ぼくは何も気をわるくしていないよ。徒党を組んで、一人の人を集中攻撃するような真似の方が、よっぽどイヤヨ~イヤイヤ」


「なにふざけてるんだよどみどりくん! 現にこいつはきみの顔にツバを吐いただろ!」


「ちがうよ。この人はぼくの観念にツバを吐いたんだ。それはあくまでこの人自身が作り上げた観念(思い込み)であって、本当のぼくじゃない。きっと、自ら作り上げたぼくの虚像に対し、思うことがあったんだろうし、言いたいことがあったにちがいないんだ。ツバを吐くという行為だって、言葉には違いないよ。絵描きにとって色や線が言葉であるように、ダンサーにとって踊ることが言葉であるようにね。けれども、そのツバを吐いた相手は、言ってみればこの人自身のこころだったんだ」


その場にいる、どみどりくん以外の全員が、呆然としてしまいました。


「次は? もう他に言いたいことはないのかな。クレヨンしんちゃんが始まる時間まででよければ、いくらでもあなたのこころを映し出す鏡の役割を引き受けるよ」




帰宅したケンジ兄ちゃんに、泣きじゃくり、声をつまらせ、謝るカズオくん。


「ケンジ兄ちゃんごめんよ、ぼく…怖くなっちゃって…逃げちゃった」


ところがケンジ兄ちゃんはというと、放心状態のまま、カズオくんを見るでもなく、夕飯も食べれずに、自分の部屋に閉じこもってしまいました。





後日、いつものように、ごきげんな様子で一人歩くどみどりくんに、ケンジ兄ちゃんはそっと歩み寄りました。


「あ、カズオくんのお兄ちゃん!」


虚を衝かれたケンジ兄ちゃんは、びっくりして止まってしまいます。


「どうして知ってんだ…」


「いや、似てるからさ。当てずっぽうで言ってみただけ」


ケンジ兄ちゃんの、次の言葉を待つどみどりくん。


ケンジ兄ちゃんは、しばらくのあいだもじもじとすると、言いにくそうに切り出しました。


「…昨日したことを、おまえに謝りにきた」


ケンジ兄ちゃんは、ふかぶかと頭を下げました。


「わるかった。許してくれ」


「許す?…うーん、困ったな」


「なにが?」


「だって許すもなにも、ぼくは昨日、カズオくんのお兄ちゃんがツバを吐いた、その同じ人間じゃないもの。川を見てごらんよ。川は流れ続けているでしょう? その川は二度と同じ川になることはなくて。ぼくにも、カズオくんのお兄ちゃんにも、どんな人間にも、ひとつの川が流れているんだ」


「……ハア?」


「カズオくんのお兄ちゃんがツバを吐いた、その同じ人間はもうここにはいないよ。確かにぼくは、昨日のぼくとそっくりに見えるかもしれない。けれども、ぼくはその人と同一人物じゃないんだ」


「……」


「申し訳ないんだけどさ、そういうわけで、ぼくはカズオくんのお兄ちゃんを許すことなんてできない。だって、ぼくはカズオくんのお兄ちゃんに何の恨みもないもの」


呆然と立ち尽くすケンジ兄ちゃんに、どみどりくんは続けます。


「ぼくだけじゃないよ。今のカズオくんのお兄ちゃんもまた、新しいんだ。ぼくは今のカズオくんのお兄ちゃんが、昨日来た人と同じ人じゃないことを知っているよ。あの人はとても怒っていたね。鬼の形相とは、まさにあのことさ。あげく、ツバを吐いたんだからね」


どみどりくんは、ニコッとほほえみました。


「けれどもあなたは、ぼくに頭を下げて、許してくれと言ったよ。そんなあなたと、昨日の人とが、同じ人間なわけがないさ。ねえ? カズオくん」


電柱の陰から覗いていたカズオくんは、びくりっとしたあと、おそるおそる、その姿を見せました。


ツバを吐いた人間と、ツバをかけられた人間と、二人とももういないよ。そんなことはもうどうでもいいからさ、三人で妖怪ウォッチごっこでもしようよ。じゃあ、え~と、ぼくがコマさんで、カズオくんはジバニャン、カズオくんのお兄ちゃんはウィスパーでどうかな」


《つづく!》









今回は仏教にまつわる寓話をベースにアレンジしてみました。
月1か、月2くらいのペースで再びブログにお邪魔させていただきます。

以下、どみどりくんからのメッセージです。
明日からまた、どみどりくんがお世話になります。


今日はどんな一日になるだろうね
あるいは どんな一日だったかな
きみにいかなる逆境や順境が待ち受けているとしても
「ふしぎ発見!」は変わらず
きみのこころの奥深くによりそっているよ

今日のきみを「ふしぎ発見!」へといざなう楽曲を紹介するね

「そんなことより幸せになろう / tentaro42」
作詞作曲 小田和正

どうして そんなにつまらないことばかり wow
ずっと 気にしているんだろう wow
めまぐるしく 時は過ぎてゆく
それなのに 自分から 悲しみを探してる
そんなことより 幸せになろう





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sayamaさん、おはよ!

役者がそろったね!

No title

じゃあオレケータくん!

konchikiさん、おはよ!

それはすごい!すごいことだねkonchikiさん。

konchikiさんの中にはめこまれた箍が、ちょっとずつちょっとずつ、外れていっているのをkonchikiさんのコメントから感じているよ。

荷物(思い込みや正しさ)を降ろせば降ろすほどに、konchikiさんが見ているケンジ兄ちゃんの表情は、だんだん変わっていくと思うんだ。

No title

konchikiにはね、めんどくさいことに、ケンジ兄ちゃんはよそにいなくてkonchikiの中にいるんだよね。
子供のころからずーーーーーーーっと!!

今日もケンジ兄ちゃんに睨まれて、んまあその形相を鏡でみたらもーんのすごいのなんの。苦しかったわー。ほんとだよ><

でもね、ちょっとずつちょっとずつ、ケンジ兄ちゃんと和解しつつある今日この頃。
探求の副産物だね。
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「どみどりくん」あるいは「じゃっく」へのメッセージ

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やあやあ、よく来てくれたね。

じゃっく&どみどりくん

Author:じゃっく&どみどりくん
オルタナティヴ・スピリチュアルの時代へ。みんなと。』の、姉妹ブログ『どみどりくんの、世界ふしぎ発見』に遊びに来てくださりありがとうございます。管理人のじゃっくと申します。

『オルタナティヴ・スピリチュアルの時代へ。みんなと。』が「表通り」を行くブログなら、こちらのブログは「裏通り」を行くブログです。
両方合わせてようやく私のメッセージの完成形となりますが、選り好みして「表通り」だけ見てもらってもまったく問題ありません。
来るべきときが訪れたなら、おのずと「裏通り」も歩かされている自分を発見されますから(ニヤリ)

で、この「裏通りブログ」が何故に必要なのかと申しますと、早い話が「表通り」だけでは解決できない、処理しきれない問題(絶体絶命のピンチ)に、人は前触れもなく遭遇するからです。
誰しものそのときのためにこそ、私「じゃっく」が、フシギニストである「どみどりくん」に扮し(チャネリング?)ながら、この「裏通りブログ」は存在し続けます。


「世界ふしぎ発見」とは言っても、某テレビ番組が世界における「目に見えるふしぎ」を発見して紹介するのとは趣がちがい、このブログでは世界における「目には見えないふしぎ」の発見を書き記することを趣旨としています。

ですが、「目には見えない」とは言っても、「UFO」「超能力」「幽霊」といった類のものとは趣が違いますし、「スピリチュアル」ともまたちょっと違うのかもしれません。
「哲学」「宗教」とも言い切れませんし、「自己啓発」「人生哲学」ともまた少し違うかもしれません。

しいて言うなら、みなさんが今まで生きてきた中で、学校教育や家庭教育やマスメディアによって抗いようもなく培われ、育くまれた「常識」「当たり前」「思い込み」「偏見」「先入観」などをとっぱらった先にある「あるがままの世界」あるいは「究極の羅針盤」の発見ってところでしょうか。


たとえばですが、

『きみが何を考え、何に思い悩み、何を行為しようとも、きみ自身は実は何もしていないのさ』

いきなりこんなことを断言されたとしたら、どう思うでしょうか。
「うん、そうだと思ってた!」という方は、おそらくは皆無に近いかと思われます。
おそらくは「あ…ちょっとこの人、ヤバイ宗教とか入ってる感じの人なんだろうな。かかわらないようにしよう…」
おおかたそんなところではないでしょうか。

ですが、私は特定の宗教を信仰していませんし、歴史上の人物や現存するいかなる人物も、敬いはしても崇拝するような対象にはなりません。この先もずっと。




そもそもはこの「裏通りブログ」から私のブログ人生が始まり、私を通路として見い出されるふしぎ発見を、誰かと分かち合い、この「リアル人生ゲーム」に活かしたいがために、2つ目のブログ『オルタナティヴ・スピリチュアルの時代へ。みんなと。』を作るにまで発展してきました。

「分かち合い」ほどの、いち人生を賭けるに値する究極の財宝、自他一挙両得のベストバイブスは、他に見当たりませんもの。
自分がまずうれしいし、同時に誰かもうれしいだなんて、はっきり言って
最高!

じゃないですか。







「ふしぎ発見!」の終わりに、みなさまを発見へといざなう楽曲も紹介しています。よろしければあわせて楽しんでください。
※和訳した歌詞は、英語力のない私がグーグル翻訳を参考に、個人的解釈で訳したものなので、ちょっとおかしいよっていう訳もあるかと思いますが、大目に見ていただけましたら幸いです。

カテゴリの中の「スーパーふしぎ発見」には、ブログの核となる発見かな、と思われるものを並べています。まあ、だからどうってわけでもありません。

カテゴリの中の「映画」がいざなうふしぎ発見については、ネタバレしているものがほとんどなので、どうか「この映画これから見ようとしてたのに(泣)」なんてことにならないようお気を付けください。

一度投稿した「ふしぎ発見!」も、一年くらい間隔をあけて読み返すと「うーん…なんでこんなふうに書いたんだろう」「この表現は不適切だなあ」「今ならこんな言葉は使わないなあ」といったことがよくあります。
私はまったくいとわず何度でも記事を修正します。
修正することによって、伝えるべきメッセージが進化しつづけていることを私自身実感できますし、過去記事と現在の記事とで違いすぎるがために読者を混乱におとしいれてしまうような事態も軽減されます。
投稿日に対してコメントの日付が古い記事は、「あ、修正した記事なんだな」と思ってください。




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